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砂漠化対処条約

砂漠化対処条約は、正式名称を「United Nations Convention to Combat Desertification in Those Countries Experiencing Serious Drought and/or Desertification, Particularly in Africa (UNCCD)」(日本語名称:深刻な干ばつ又は砂漠化に直面する国(特にアフリカの国)において砂漠化に対処するための国際連合条約)」という。
本条約は、1994年6月17日、パリのユネスコ本部で120カ国の出席のもと開催された第5回砂漠化対処条約の政府間交渉委員会において採択され、1996年に発効した。

本条約は、深刻な干ばつ又は砂漠化に直面する国(特にアフリカの国)や地域が砂漠化に対処するために行動計画を作成し及び実施すること、また、そのような取組みを先進締約国が支援すること等について規定した条約である。

条約の構成

条約は、前文、本文40か条、末文及び、砂漠化・干ばつの恐れのあるアフリカ、アジア、ラテン・アメリカ及びカリブ、地中海北部並びに中・東欧の5地域を対象にした実施附属書から構成されている。
条約本文では、以下のことを規定している。


(1) 砂漠化の影響を受ける国は広範な分野にわたる措置を盛り込んだ行動計画を作成・実施する。
(2) 先進国は行動計画を積極的に支援する。
(3) 砂漠化の影響を受ける国は行動計画の実施状況について、また、先進国は行動計画の支援状況について、それぞれ締約国会議(COP)に報告書を定期的に提出する。
(4) 締約国会議は報告書を検討し、勧告する。

また5地域の実施附属書(地域文書)では、各影響地域の状況に応じた行動計画の策定手続および実施調整メカニズムを規定している。

主な条項の概要

砂漠化の定義(第1条)

 「砂漠化」は、「乾燥地域、半乾燥地域及び乾燥半湿潤地域における種々の要因(気候の変動及び人間活動を含む。)による土地の劣化」と定義されている。   ここで「土地の劣化」とは、「乾燥地域、半乾燥地域及び乾燥半湿潤地域において、土地の利用によって又は次のような過程(人間活動又は居住形態に起因するものを含む。)若しくはその組合せによって天水農地、かんがい農地、放牧地、牧草地及び森林の生物学的又は経済的な生産性及び複雑性が減少し又は失われることをいう。
(i) 風又は水により土壌が侵食されること。
(ii) 土壌の物理的、化学的若しくは生物学的又は経済的特質が損なわれること。
(iii) 自然の植生が長期的に失われること。」 と定義されている。
  さらに「乾燥地域、半乾燥地域及び乾燥半湿潤地域」とは、「年平均降水量の可能蒸発散量に対する割合が○・〇五から○・六五までの範囲内である地域(北極及び南極並びにこれらの周辺の地域を除く。)」と定義されており、サハラ砂漠等の極乾燥地域は、条約の対象から除外されている。



締約国の一般義務(第4条)

砂漠化への対処にあたり、物理的、生物学的、社会経済的側面に対する総合的な取組方法を採用すること、持続可能な開発の促進を可能にする国際経済環境を確立するため途上国の国際貿易等に妥当な注意を払うこと、砂漠化への対処に貧困撲滅の戦略を組み入れること、小地域、地域、国際レベルの協力を強化すること、既存の資金供与の仕組み・取決めの利用を促進すること等について規定している。


砂漠化の影響を受ける締結国の義務(第5条)

砂漠化対処と干ばつの影響緩和のために、十分な資金を配分し、持続可能な開発のための計画の中での砂漠化対処の戦略・優先順位を確立し、NGOの支援を得て住民の参加を促進することが義務づけられている。



先進締約国の義務(第6条)

開発途上締約国の砂漠化対処と干ばつの影響緩和のための努力を積極的に支援し、相当の資金その他の支援を提供し、GEFからの資金供与等を促進すること、技術、知識およびノウハウの移転を促進することが義務づけられている。



国家行動計画(第10条)

国家行動計画は、砂漠化の要因並びに砂漠化対処及び干ばつの影響緩和のために必要な実際的な措置を特定することを目的とし、砂漠化対処と干ばつの影響緩和の長期的戦略を立て、持続可能な開発のための国の政策に行動計画を組み入れること、土地の劣化防止に重点を置くこと、行動計画の実施・検討や政策決定の際、 NGOや地域住民の参加を確保すること等が定められている。
行動計画に包含すべき優先分野として、貧困の撲滅・食糧安全保障に関する計画強化のための代替的な生計手段の促進と経済環境の改善、人口変動、天然資源の持続可能な管理、持続可能な農業方式、多様なエネルギー源の開発、制度的・法的枠組み、評価及び組織的観測の能力強化、教育・啓発等をあげている。



[参考文献]
日引實知子. 2005. 砂漠化対処条約.
(西井正弘編. 地球環境条約−生成・展開と国内実施. 東京:有斐閣), p 268-290.



砂漠化対処条約条文(全文和訳) (PDFファイル)

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