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センターの取り組み

センターの目的

 乾燥地 (arid rand, drylandとも言う) とは、気候が乾燥した土地のことで、世界の陸地面積の約4割を占めています。そこには、2000年の時点で約20億人(世界人口の約35%)の人々が暮らしています。さらに、多様な乾燥地生態系があり、日本では見られない素晴らしい世界が広がっています。
しかし、一方で乾燥地は他の地域と比べて生物生産力が低く、一人当たりのGDP(国内総生産)が最も低く、乳幼児死亡率が最も高いなど、人間の福利のレベルが最も低い場所です。また、砂漠化や干ばつ等、地球規模の環境問題を抱えている地域でもあります。

 
 乾燥地の分布(MA2005* より)
*Millenium Ecosystem Assessment(2005) Ecosystems and Human Well-being:Desertification Synthesis, Island Press


砂塵嵐 塩類集積 干ばつ
乾燥地の砂漠化・土地劣化・干ばつ  


 乾燥地における土壌の侵食や塩類化、植生の荒廃などの土地の劣化を砂漠化といい、乾燥地は、干ばつや砂漠化などの災害に見舞われています。国際社会では、こうした乾燥地の問題を、砂漠化・土地劣化・干ばつ(Desertification, Land Degradation and Drought:DLDD)とまとめて呼んでいます。この乾燥地における砂漠化や干ばつに対処するための国際的な枠組みとして国連砂漠化対処条約がありますが、我が国でも1998年9月に受諾書を国連事務総長に寄託し、同年12月10日に条約発効しています。乾燥地研究センターは日本における国連砂漠化対処条約への科学的窓口としても活動しています。

 私たちが研究を進めている「乾燥地科学」とは、乾燥地の人や自然に学びつつ、数多くの困難に直面し支援を必要としている乾燥地の自然と社会に対して、その持続性の維持・向上に貢献するための科学技術・学術です(乾燥地研究センター監修「21世紀の乾燥地科学」(古今書院)、2007)。
 乾燥地科学は、乾燥地に特異的な人や自然の成り立ち、例えば乾燥地で生育する動植物の謎を解明することで、新たな乾燥「知」を創出してきました。また干ばつ、砂漠化などの問題を解決することで乾燥地に暮らす人々の生活を改善してきました。

 日本は国際社会の一員として国連の砂漠化対処条約等を通じた世界人類の福祉に貢献する義務を負っています。また、黄砂等の乾燥地の砂漠化問題が、日本の環境や人々の暮らしに直接的な影響を及ぼしています。さらに日本は乾燥地の国々から食料やエネルギーを多く輸入しており、乾燥地の諸問題は私達の暮らしと直結しています。

 鳥取大学乾燥地研究センターは、日本で唯一の乾燥地教育研究機関であり、共同利用・共同研究拠点「乾燥地科学拠点」としても認定され、国内外との共同研究を通じ、乾燥地の諸問題についての研究推進や人材育成の役割を担ってきました。
 乾燥地研究センターの目的は、「乾燥地科学分野における全国共同利用の拠点として、砂漠化や干ばつ等の諸問題の解決及び乾燥地における持続可能な開発に資する研究を推進すること」です。
 砂漠化や干ばつ、そして今後重要性を増してゆくと考えられる気候変動等、地球規模の問題の解決には、国内外の研究ネットワークの形成と活用が不可欠です。乾燥地研究センターは国内外の研究者とともに「乾燥地科学」を推進し、乾燥地が抱える諸問題の解決を通じて乾燥地における、国連で採択された持続可能な開発目標(SDGs)達成に貢献していきます。


研究機関・大学との共同研究

 乾燥地研究センターは、1978年以来、国内外の研究機関・大学との間で乾燥地に関する共同研究を実施しています。2010年度からは共同利用・共同研究拠点「乾燥地科学拠点」として公募による全国共同研究を実施しています。共同研究ではセンターの共同利用施設が積極的に活用され、毎年12月には共同研究発表会が開催され、全国から多くの研究者、大学院生等が集まり、研究成果の発表、特別講演、ポスターセッション等を行い、研究員相互の情報交換が盛んに行われます。また、世界の乾燥地の現状や乾燥地研究にかかる最新の学術動向など情報共有のため、毎年多くの著名研究者を招へいし、公開セミナーや講演会を開催しています。なお、乾燥地科学分野に関する様々な情報交換が行えるメーリングリストarid-netを解説しています。



海外乾燥地研究機関・大学との共同研究

 海外の研究機関と共同で乾燥地における農業開発のための調査研究をしています。近年はイスラエル・ヘブライ大学、中国・北京林業大学、スーダン農業研究機構、中国科学院水土保持研究所、中国科学院遺伝与発育生物学研究所農業資源研究センター(前石家荘農業現代化研究所)と国際学術交流協定を締結し、国際共同研究はますます盛んになっています。

世界地図
図のはセンターや鳥取大学の研究者が携わった研究地を示しています。

米国農務省塩類研究所(アメリカ)
イスラエル農業省ボルカンセンター(イスラエル)
ヘブライ大学(イスラエル)
ベングリオン大学(イスラエル)
カーティン工科大学(オーストラリア)
クイーンズランド天然資源鉱物省熱帯農業センター(オーストラリア)
豪州熱帯農学研究センター(オーストラリア)
サスカートン大学(カナダ)
科学技術庁(サウジアラビア)
KingAbdulaziz大学(サウジアラビア)
KingEahd大学(サウジアラビア)
国際乾燥地域農業研究センター(シリア)
スーダン農業研究機構(スーダン)
コメニウス大学(スロバキア)
Kasetsart大学(タイ)
内蒙古農業大学(中国)
内蒙古林業科学研究院(中国)
中国科学院新彊生態学地理研究所(中国)
中国科学院水土保持研究所(中国)
北京農業大学(中国)
遼寧省林業科学研究院(中国)
チクロバ大学(トルコ)
ムスタファ・ケマル大学(トルコ)
ファイサラバード農業大学(パキスタン)


学術交流協定校

北京林業大学(中国)
新疆農業大学(中国)
蘭州大学(中国)
中国科学院水利部水土保持研究所(中国)
中国科学院遺伝及び発育生物学研究所農業資源研究センター(中国)
中国科学院西北生態環境資源研究院(中国)
気象水文環境情報研究所(モンゴル)
モンゴル科学アカデミー地理学・地生態学研究所(モンゴル)
国際乾燥地農業研究センター(レバノン)
ヘブライ大学(イスラエル)
スーダン農業研究機構(スーダン)
ハルツーム大学(スーダン)
乾燥地域研究所(チュニジア)
バハルダール大学(エチオピア)
国立農牧林業研究所(メキシコ)
バーリ地中海農学研究所(イタリア)
西オーストラリア大学(オーストラリア)
国際塩生農業研究センター(OAE)
サマルカンド国立大学(ウズベキスタン共和国)
ワルシャワ大学(ポーランド共和国)


JICA等の外国人研修

JICAの研修風景
(JICAの研修風景)
JICA等を通じて、乾燥地・半乾燥地に属する発展途上国の研究者・技術者を対象に、環境に配慮した農業開発に関する基礎知識と応用技術の研修を行っています。



大学院、学部学生、外国人留学生、研究生の教育・指導

 乾燥地研究センターでは、大学院持続性社会創生科学研究科国際乾燥地科学専攻および連合農学研究科国際乾燥地科学専攻に参加し大学院生への専門的な教育を行い、緑化、砂漠化防止、農業生産を通じて乾燥地の環境や貧困問題の解決に貢献できる人材を育成しています。また研究生やポスドクを積極的に受け入れて研究指導を行っており、留学生や外国人研究者も多く受け入れています。海外の現地フィールドでは、乾燥地で起こる諸問題の解決策を学生と教員が一緒に考え実践しています。


限界地プロジェクト

「乾燥地植物資源を活用した天水栽培限界地における作物技術の開発-世界の耕作限界地における持続的開発を目指して-」
 平成27年度、文部科学省特別経費事業として採択されました。このプロジェクトは生活の基盤である食糧、油糧、飼料作物を対象に、進んだ分子生物学的技術による作物改良と保全型栽培管理技術を合わせることにより、年間降水量300ミリメートル台の降雨依存農業地域で、持続的な生産を可能にする農業技術パッケージを作ることに挑戦します。


ポストGCOEプロジェクト(乾燥地科学)

 グローバルCOEプログラムで形成された拠点機能をさらに向上・発展させるため、本学独自の事業として2012年度から学際的なプロジェクト、「ポストGCOEプロジェクト(乾燥地科学)」を実施しています。


乾燥地植物資源バンク室

 乾燥地に由来する植物を用いた研究の進展のため、共同利用・共同研究拠点の機能を拡充して、2012年4月に乾燥地植物資源バンク室を開設しました。
 乾燥地植物資源バンク室では、乾燥地に生存する植物や耐乾性の作物品種・系統などを組織的に収集・保存・増殖・評価して、共同研究者らに提供します。さらに、保有している植物に関する情報や研究成果を収集し、提供植物にこれらの”情報”を付加することで、植物資源の研究利用価値を高めます。
 このほか、乾燥地植物に関する情報発信や教育も行っています。



研究成果、研究施設等の公開

 乾燥地研究センターでは従来より乾燥地研究に関する研究内容や研究成果を年報やホームページを通じて公開しています。これに加え、アリドドーム実験施設の完成を機に、主に地域住民の方々を対象に、乾燥地や砂漠化防止に関わる研究の重要性をより一層理解してもらうことを目的として、平成10年から研究施設の一般公開を開始しました。
 一般公開のほか、平成11年からは地域の小学校高学年の児童を対象とした「きみもなろう、砂漠博士」を実施しています。これは様々な実験を通じて乾燥地の自然や砂漠化の現状やその対策について考えてもらう試みです。
 また、乾燥地研究センターで行われている共同研究発表会には毎年多くの研究者、大学院生等が集まり、共同研究の成果発表、情報交換等を行う場となっています。

 毎年、小学生4,5,6年生を対象に「きみもなろう!『砂漠博士』」を実施しています。乾燥地研究センターの研究員が、楽しい実験盛りだくさんのレクチャーを行います。

 乾燥地研究センターでは、一般の方に広く乾燥地研究を理解していただくために、一般公開を行っています。毎年乾燥地研究センターの教員による講演や、普段は見ることの出来ないアリドドーム実験施設等の公開等を行っています。


過去のセンターの取り組み

日本学術振興会拠点大学交流事業による学術交流(平成13年度~22年度)

 日本学術振興会拠点大学方式による二国間学術交流として、鳥取大学乾燥地研究センターと中国科学院水土保持研究所を拠点大学として、協力大学及び協力研究者の参加のもとに、中国内陸部の砂漠化防止及び開発利用に関する研究(乾燥地研究分野)をスタートさせました。
 この事業では、中国の黄土高原を対象に、砂漠化を食い止めるための技術の開発と持続的な発展モデルを構築する取り組みを行いました。



グローバルCOEプログラム(平成19年度~23年度)

 本事業は、世界をリードする創造的な人材育成を図るため国際的に卓越した教育研究拠点の形成を、文部科学省が支援して実施した事業です。
本センターでは、平成14年度から実施した21世紀COEプログラム「乾燥地科学プログラム」に続いて、平成19年度に「乾燥地科学拠点の世界展開」プログラムが採択されました。この事業では、地球規模の課題である「砂漠化」の難題に取り組み、「地球環境」「農業生産」「分子育種」「保健医学」「環境修復」の5つの研究グループを通して研究を推進し、課題に取り組んで来ました。このほか、海外研究機関との連携ネットワークの強化や海外で活躍できる実務者・研究者の育成に取り組んできました。



日本学術振興会 若手研究者インターナショナル・トレーニング・プログラム(ITP)

本事業は、鳥取大学で最も実績のある乾燥地研究分野において、国際的通用性のある若手研究者を育成することを目標としています。すなわち海外の大学あるいは国連機関、国際研究機関等で職責にふさわしいミッションを充分にこなすなど、国際的に活躍する人材を育成することを目指しています。
また、国際連合大学ほか5機関の共同による共同修士号プログラムである「乾燥地における総合的管理に関する共同修士号プログラム」(Joint Master's Degree Programme in Integrated Management in Drylands 略称:MSプログラム)を本事業に活用して、このプログラムをより発展・拡充させ、修士課程学生を含む若手研究者を育成します。



日本学術振興会 組織的な若手研究者等海外派遣プログラム

 本プログラムは乾燥地研究センターを申請代表組織、農学研究科を協力研究組織として平成21年度に採択されました。平成22年2月から3年間、両部局の若手研究者(講師、助教、ポスドク、大学院生)を4つの海外協力機関に派遣します。
 国際乾燥地農業研究センター(ICARDA、シリア)では主に分子育種および水・土壌保全、環境修復の研究を中心に、寒区旱区環境工学研究所(CAREERI、中国)とは砂漠化土地の修復研究を中心に、砂漠研究所(DRI、アメリカ)および気象水文研究所(IMH、モンゴル)とは風送ダスト(黄砂)の研究を中心に共同研究・共同人材育成に取り組みます。

黄砂プロジェクト

「東アジア砂漠化地域における黄砂発生源対策と人間・環境への影響評価」
 平成23年度、文部科学省特別経費事業として採択されました。黄砂や砂塵嵐の被害が広がっているモンゴルや中国の乾燥地現場と黄砂の影響を受ける日本国内で、人間及び自然環境系への影響解明を行うとともに、乾燥地現場において、黄砂、砂塵嵐の発生メカニズムの解明と黄砂発生源対策に関する研究を行います。

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