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砂漠化の原因・現状

砂漠化の原因

大きく気候的要因と人為的要因に分けることができる。


気候的要因

1900から1999年の年降水量の変化傾向

傾向は1961から1990の平年値に対する割合(%)として示されている。 緑と赤の丸はそれぞれ増加、減少傾向を示す。



上の図はIPCC WGⅠ第3次報告書(2001)のなかで示されている過去100年(1900〜1999年)の年降水量の変化傾向である。世界の乾燥地域をみると、サハラ砂漠南縁のサヘル地帯などで減少傾向が著しいが、この地域の砂漠化にはこのような気候的要因が効いている。しかしながら、それ以外の乾燥地域でも著しい降水の減少が認められないことからも分かるように、気候的要因の砂漠化に対する影響は地域によってまちまちである。
サヘルにおける降水の減少傾向は1950年代〜1980年代中ごろに顕著であるが、この原因については、広域的な海面水温に起因する大気循環の変動や地域的な地表面状態の変化などが指摘されている。1970年代後半以降は、熱帯太平洋の海面水温の変化と同調して、強い干ばつが世界で広域的に発生する傾向にある。



人為的要因

砂漠化の人為的要因としては、過放牧、薪炭材の過剰採集、過開墾、不適切な水管理による塩類集積などがあげられる。これらは植生の減少、土壌侵食の増大、表層土壌への塩類集積を引き起こし、土壌の劣化、土地の生産力の減退をもたらしている。砂漠化の背景には当該地域住民の貧困と急激な人口増といった社会・経済的な要因が存在する。下表は原因別砂漠化地の面積を示すものである。


乾燥地における人為的要因別土壌の劣化面積(極乾燥地域は除く)(単位:106ha)

地域 乾燥地面積
うち土壌の劣化面積
過放牧 樹木過伐採 過開墾 不適切な土壌
・水管理
その他 小計
アフリカ 1286.0 184.6 18.6 54.0 62.2 0.0 319.4
アジア 1671.8 118.8 111.5 42.3 96.7 1.0 370.3
オーストラリア 663.3 78.5 4.2 0.0 4.8 0.0 87.5
ヨーロッパ 299.6 41.3 38.9 0.0 18.3 0.9 99.4
北米 732.4 27.7 4.3 6.1 41.4 0.0 79.5
南米 516.0 26.2 32.2 9.1 11.6 0.0 79.1
5169.1 477.1 209.7 111.5 235.0 1.9 1035.2

UNEP(1997):"World Atlas of Desertification:Second Edition" London:Arnoldを改変


■ 過放牧による植生破壊

(中国) 提供 井上光弘

■ 薪炭材の過剰採取による植生破壊

提供 (財)日本環境協会

■ 道路造成後の表土流出

(中国) 提供 井上光弘

 
灌漑による塩類集積により、地表面に塩分が集積した農地(中国)

提供 北村義信

砂漠と砂漠化の現状

砂漠とは、乾燥のため植生があまり見られない地域をいう。国連による最近の報告(UNEP, 2006)によると、世界の砂漠の面積は、およそ19〜34億haとされている。



Global Deserts Outlook (UNEP, 2006)



世界の砂漠の分布(世界砂漠アウトルック(UNEP, 2006)より)

この地図では、3種類の定義(乾燥度指数を用いた気候学的定義、植物・動物から見る生物学定義、衛星画像を用いた相観的定義)によってそれぞれ砂漠の範囲を決め、その3つの定義すべてにあてはまる地域を濃い赤(面積的には約19億ha)、どれか1つに当てはまる地域を薄い赤(濃い赤と薄い赤をたして約34億 ha)であらわしている。


世界の乾燥地(dryland)は、陸地の41%を占め、そこに世界人口の3分の1にあたる20億人が暮らしている。乾燥地に住む人々の大半にとって、生活は厳しく、将来の見通しも安定しない。砂漠化は、さらに貧困を悪化させたり、新たな貧困を生み出す。最近の推計では、砂漠化は乾燥地の10〜20%で生じている。(ミレニアムエコシステムアセスメント、2005)





世界の砂漠化の現状(UNEP, 1997)

この地図では、極乾燥地域をのぞく乾燥地において土壌劣化がみられる地域の分布をあらわしている。上の図と比較すると、砂漠以外の土地でも砂漠化が生じていることがわかる。

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