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育種を支える薬剤として有望なTFMSAが雄性不稔を誘導するメカニズムを解明しました。

Trifluoromethanesulfonamide Induces Male Sterility Through Systemic Metabolic Reprogramming and Anther-Specific Proline Deficiency
Yuka Sekiguchi, Yan Gao, Hiromitsu Tabeta, Muneo Sato, Masami Y. Hirai, Nasrein Mohamed Kamal and Takayoshi Ishii

Journal: International Journal of Molecular Sciences

化学的雄性不稔化剤は、大規模な雑種種子生産を可能にする一方、その作用機構には未解明な点が多く残されています。本研究では、トリフルオロメタンスルホンアミド(TFMSA)による雄性不稔誘導機構を解明するため、複数種の葉および生殖組織を対象とした統合メタボローム解析を行いました。TFMSA処理によって、アミノ酸代謝、中心炭素代謝、一炭素代謝を中心とした広範な代謝再編成が複数の種で誘導され、個々の代謝物応答には種間差が認められたものの、経路レベルでは炭素‐窒素代謝ネットワークの変動が共通して観察されました。生殖組織では組織特異的な代謝変化が認められ、ササゲ葯ではプロリンのみが有意に減少し、強い欠乏が確認されました。一方、花器官ではフェニルアラニンやチロシンなど複数のアミノ酸が蓄積していました。経路解析からは、葯でのプロリン減少に加え、全身的な代謝変動が伴うことが示唆されたため、TFMSAは代謝再編成を介して、花粉発達に必要な代謝物を枯渇させることで雄性不稔を誘導すると考えられます(図1)。TFMSAの利用は、植物における効率的な交配系構築・植物生殖科学の発展に有用な技術になることが予想されます。

図1 TFMSAによる雄性不稔の誘導機構についての模式図 (Sekiguchi et al., 2026).