タルホコムギの地下部形質が、コムギのストレス耐性を高める重要な遺伝資源となりうることが確認されました。
- 2025/10/02
- 研究成果
Exploring Genetic Variation in Root Traits and Root–Fungal Associations in Aegilops tauschii
Ahmed Khaled Hassan Mohammedali , Yasir Serag Alnor Gorafi, Nasrein Mohamed Kamal, Izzat Sidahmed Ali Tahir, Hisashi Tsujimoto and Takeshi Taniguchi
Journal: Agriculture
現代のコムギ育種は主に地上部形質を重視してきたため、ストレス環境への適応に不可欠な根系の遺伝的多様性が縮小している可能性が指摘されています。本研究では、パンコムギのDゲノム供与体であるタルホコムギ(Aegilops tauschii, 9系統)、四倍体デュラムコムギ(Triticum turgidum, Langdon (LNG))、および六倍体パンコムギ(Triticum aestivum, Norin 61 (N61))を対象とし、それぞれの系統の根の形質とその共生菌との関係を解析しました。
結果として、タルホコムギ系統はLNGおよびN61に比べて根系の発達が顕著であり、さらに共生するアーバスキュラー菌根菌(AMF)の定着率が高いことが明らかとなりました(図1)。クラスター解析では、供試系統が4つのグループに分類され、その中には根の発達および菌類との相互作用が特に良好なグループが検出されました(図2)。
これらの知見は、タルホコムギが有する地下部形質が、気候変動下におけるコムギのストレス耐性強化に資する重要な遺伝資源であることを示しています。

図1.Keyence VHXデジタル顕微鏡で見たコムギの根細胞内の内生菌:A) アーバスキュラー菌根菌(AMF)の小胞、B) AMFの樹枝状体、C) AMFの胞子、D) ダークセプテートエンドファイト(DSE)の菌糸と暗色の隔壁構造、E)およびF) AMFの胞子(濃青色)とDSEの構造(茶色)。

図2.各系統の根の形質を用いたの階層的クラスタリングヒートマップ。黒線はタルホコムギ(Ae. tauschii)系統とLNG系統およびN61系統を区別する。赤破線は4つのクラスタリンググループを示す:(1) 優れた根形質を持つAe. tauschii、(2) 劣った根形質を持つAe. tauschii、(3) Langdon (LNG)、(4) Norin 61 (N61)。黒破線は形質のクラスターを区別する:1つはDSFのコロニー形成と根重あたり根長(SRL)を含むクラスター、もう1つはAMFコロニー形成とその他のすべての根形質を含むクラスター。