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2000年から2023年の乾燥地域における土地劣化面積の推移を衛星データ解析により明らかにしました。

Area of land degradation in arid regions from 2000 to 2023
Reiji Kimura and Masao Moriyama

Journal: Journal of Agricultural Meteorology

砂漠化の要因は自然要因と人為的要因に大別されますが、干ばつは乾燥地に甚大な被害をもたらす自然要因であり、土壌劣化や風食を加速させることが報告されています。本研究では、風食に対して脆弱な土地を「劣化した土地」と定義し、衛星データから得られたNDVI (Normalized Difference Vegetation Index)およびSbAI (Satellite-based Aridity Index)の閾値を用いて、2000年から2023年までの乾燥地における土地劣化面積の変動をモニタリングしました。
解析の結果、土地劣化面積は2000年以降減少傾向を示しましたが、2015年頃からは徐々に増加に転じました(図1)。この増加傾向が自然要因か人為的要因によるものかを断定することは困難ですが、サヘル、中央アジア、アメリカ西部における実際の干ばつ傾向と一致することを踏まえると、地球規模の気候変動による自然要因が支配的であった可能性が高いと考えられます(図2)。
さらに本研究では、気候植生地域に基づき、SbAIとNDVIの最大値(NDVImax)を比較することで、植生状況と土地利用の気候適合性を評価する手法を提示しました(図3)。この手法により、土地利用が気候学的なポテンシャルから逸脱した地域を特定することができます。
本研究で対象とした24年間という長期スケールにおいても、土地劣化面積は変動を繰り返しています。したがって、衛星による継続的モニタリングは乾燥地域に対する気候変動の影響評価に不可欠であると考えられます。本手法は、乾燥地域における土地劣化の評価および持続可能性の議論に資する有効なアプローチとなることが期待されます。

図1.2000年~2023年までの全球を対象とした土地劣化面積と全陸地面積に対するその割合

図2.2015年と2023年の土地劣化面積の比較。特に、サヘル地域では、2023年の土地劣化面積は2015年のそれに比べて、増加が目立っています。

図3.2000年から2023年までのSbAIとNDVImaxとの関係。それぞれの色付きの四角は、気候に適した土地利用を示し、破線の四角は移行地域を示しています。