高温と窒素欠乏条件に強いコムギ系統を発見しました。
- 2025/07/22
- 研究成果
Genetic variation and genome-wide association analysis of nitrogen use efficiency-related traits under combined heat and nitrogen-deficient stress in an Aegilops tauschii-derived wheat population
Amir Ibrahim Ismail Emam, Izzat Sidahmed Ali Tahir, Nasrein Mohamed Kamal, Yasir Serag Alnor Gorafi, Hisashi Tsujimoto, Takayoshi Ishii
Journal: Frontiers in Plant Science
気候変動と肥料コスト高騰の中、高温と窒素欠乏は世界のコムギ収量を大きく脅かしています。本研究は日本品種「農林61号」に野生種Ae.tauschii由来染色体を導入したMSD145系統を、スーダン中部の高温6環境で十分な窒素(HS-HN)/無施肥(HS-LN)環境で栽培し比較ました(図1)。農業形質を18項目測定しゲノムワイドなマーカーを使用し、BLUP・GWAS解析を実施しました。HS-LNでは平均穀物収量14%、穀物窒素吸収量28%減でしたが、千粒重と収穫指数は上昇し資源再配分を示唆しました。MSD26・181・485は広域適応的に高収を示し最も優れた系統で有ることが明らかになりました。HS-HN 条件では、MSD53・450、HS-LN条件 ではMSD192・383が高い収量を維持しました。GWASで12染色体34座(62%はDゲノム)を検出しました。5A染染色体には粒成長・収量、3D染色体には穀物窒素吸収量を制御していることが示唆されました。これらの染色体領域にはMAPKやDELLA(Rht-1)等候補遺伝子を含み、持続可能でN効率型の耐暑コムギ育種に活用できる成果であり、肥料節減と環境負荷低減にも貢献します。

図1スーダンでのN窒素肥料の実験風景。向かって左が高N、右が低N処理区