イネとコムギの雑種が持つゲノム情報を解析し、イネ科植物の異なる亜科間での遺伝資源の活用方法についての手がかりを得ました。
- 2024/11/01
- 研究成果
Wheat cybrid plants, OryzaWheat, regenerated from wheat-rice hybrid zygotes via in vitro fertilization system possess wheat–rice hybrid mitochondria
Tety Maryenti, Shizuka Koshimizu, Nonoka Onda, Takayoshi Ishii, Kentaro Yano and Takashi Okamoto
雑種は遺伝的な多様性を生み出し、作物改良にとても重要です。しかし、異なる生物の間には「交雑障壁」と呼ばれる障壁があり、自由に交雑することは難しい場合が多くあります。イネとコムギも人類にとって非常に重要な作物ですが、通常の方法では交雑できませんでした。ところが、最近になって植物の顕微授精法を使うことで、この障壁を乗り越えることに成功しました。
本研究では、こうして作られたイネとコムギの雑種「イネコムギ」のゲノム構成を、ゲノム科学や細胞遺伝学、分子生物学の手法で詳しく調べました。その結果、イネコムギのミトコンドリアは、イネとコムギの特徴を併せ持つ雑種であり、次の世代にもこの情報が受け継がれることがわかりました。また、調査した個体の中には、イネの1番染色体がコムギの6A染色体に転座している「キメラ個体」が発見されました。
これらの発見によって、イネ科植物の異なる亜科間で遺伝資源を相互に利用する可能性への突破口が開かれたといえます。
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図 イネコムギの細胞に対する蛍光in situハイブリダイゼーション法により、イネコムギはイネ(緑)とコムギ(赤)のミトコンドリアゲノム配列からなる雑種ミトコンドリアゲノムを持つことが明らかになった。