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植物が倍数性種になる際に、動原体がどのように適応するかの仕組みの一部を解明しました。

Centromere sequence-independent but biased loading of subgenome-specific CENH3 variants in allopolyploid Arabidopsis suecica
Raheleh Karimi-Ashtiyani, Ali Mohammad Banaei-Moghaddam,Takayoshi Ishii, Oda Weiss, Jörg Fuchs, Veit Schubert and Andreas Houben

Journal: Plant Molecular Biology

生物の遺伝情報は染色体に含まれ、すべての遺伝情報(ゲノム)を正確に細胞に伝えるために、染色体は複製・分配される必要があります。特に、多くの作物を含む植物は「倍数性種」と呼ばれる複数のゲノムを持ち、これによりストレス耐性などが高まっていることが知られています。ただし、倍数性種での染色体分配に関わる「動原体」という部分の機能については、まだ十分には解明されていませんでした。
動原体は、染色体が細胞分裂の際に正しく分配されるために必要な領域で、特定のタンパク質(ヒストンH3)がCENH3/CENP-Aに置き換わることで形成されます。異なるゲノムが混ざり合う異質倍数性種では、どのようにして機能的な動原体が形成されるのかが、これまでよくわかっていなかったのです。
そこで、私たちは異質倍数性種であるArabidopsis suecicaと、その祖先種であるA. thalianaとA. arenosa、およびこれらの雑種を使って、CENH3が異質倍数性種でどのように働いているのかを調べました。その結果、異質倍数性種では、A. arenosaのCENH3遺伝子が他より多く発現し、動原体でもA. arenosaの影響が強く出ていることがわかりました。この発見は、異なるゲノムを持つ倍数性種の進化的な適応の仕組みを理解する手がかりとなり、将来的に新たな耐性を持つ安定した作物を作るための重要な知見となります。


図 異質倍数性種における異なるゲノムのセントロメアでのCENH3タンパク質の局在の模式図