風食の進行をモニタリングするための簡易観測システムを開発しました。
- 2024/09/10
- 研究成果
Development of a simple observation system to monitor regional wind erosion
Reiji Kimura, Jiaqi Liu, Ulgiichimg Ganzorig and Masao Moriyama
Journal: Remote Sensing
本研究では、砂漠化の主要な原因である風食に着目し、植生の状態(例えば被覆度)や地表面の湿潤度合い、飛砂現象などの状況から、地域的な風食を監視するための簡易観測システムを開発しました。システムの検証は、実際に干ばつや黄砂の発生に敏感なモンゴルのホルドで2023年3月から継続しています。本システムは、飛砂、植生状態(正規化差植生指数)、地表面湿潤度(地表面温度による熱慣性指標)、および風食に関連する景観を監視するための機器(可視画像カメラ)で構成されています。特に、飛砂を測定するための機器は、劉元特命助教と木村准教授が発明した「無指向飛砂量計測装置」であり、鳥取大学が特許権を取得したものです。
ホルドにおける2023年3月5日から6月5日(すなわち、東アジアにおける黄砂のシーズン中)までの観測では、16回の飛砂と8回の砂嵐のイベントが観測されました。正規化差植生指数と可視画像により、この期間における植生量はかなり少ないことが示され、地表面湿潤度も飛砂を発生させるほどの乾燥状態を示していました。すなわち、解析期間中の地表面は風食を発生させやすい状況であったことが示唆されます。
本システムは比較的シンプルで低コストであるため、気象観測所に隣接することで、乾燥地における風食を自動監視することが可能になります。信頼性の高いシステムを構築するには、モンゴル全土で観測結果を蓄積していく必要があります。

モンゴルのホルドに設置された風食簡易観測システム

2023年3月5日から6月5日までに観測された飛砂イベントと日最大風速の季節変化