Tottori University

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コムギ近縁野生種から種子休眠遺伝子を同定しました。

Mining Aegilops tauschii genetic diversity in the background of bread wheat revealed a novel QTL for seed dormancy
Ahmed MIY, Gorafi YSA, Kamal NM, Balla MY, Tahir ISA, Zeng L, Kawakami N, Tsujimoto H 

Journal: Frontiers in Plant Science

気候変動による干ばつ、熱波、豪雨などの極端な気象が増加しており、これに適応できる作物品種の育種開発が非常に重要です。この研究では、コムギの近縁野生種であるタルホコムギから、強力な種子休眠遺伝子を見つけ出しました。収穫期に雨が降ると種子が穂の上で発芽する「穂発芽」という現象が起こります。通常の品種は、これを防ぐため種子休眠性をもち、収穫後一定期間発芽しないようになっています。これまで乾燥地域では収穫期に雨が少なかったため、品種に種子休眠性を付与する必要がありませんでした。しかし、最近では乾燥地でも降雨が発生するようになり、休眠性をもたせる必要が出てきました。本研究では、タルホコムギの種内変異を含むパンコムギ集団の休眠性を調査し、アフガニスタン由来のタルホコムギに休眠性を高める遺伝子を発見しました。さらに、遺伝分離集団を開発して分析した結果、この遺伝子は5D染色体に存在することが明らかとなり、QSd.alrc-5Dと名付けました。今後、乾燥地の品種でもQSd.alrc-5Dを導入して、穂発芽を防ぐための対策が必要です。この研究成果は、気候変動への適応性を持つ新しい作物品種の育成に向けて重要な一歩となります。

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種子休眠性のマッピング。5D染色体上に強い遺伝子が出現しています。