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乾燥地の分布と土地利用の現状を評価するとともに、乾燥地におけるSOC(土壌有機態炭素)隔離の可能性を提示しました。

Recent global distribution of aridity index and land use in Arid Regions
Reiji Kimura and Masao Moriyama

Journal: SOLA (Scientific Online Letters on the Atmosphere) 

 近年(2000年~2020年)の乾燥度指数の空間分布を計算し(図1)、過去の結果(1951年~1980年)と比較しました。乾燥地全体の面積に変化はありませんが、近年、乾燥地の中でも比較的湿潤な地域、つまり半乾燥地と乾燥半湿潤地の面積は減少、極乾燥地の面積は増加傾向にありました。気候学的には、比較的湿潤な気候帯が乾燥化していることが示唆されました。
 乾燥地における土地利用の第1位は草原であり、灌木地、耕作地、サバンナ、木本サバンナがそれに続きました。乾燥地の半分以上は草原(18,651,109 km2)と灌木地やサバンナを含む乾燥地林(13,331,231 km2)(その中で、典型林は乾燥地全体の1.1%)で占められています。図2は、乾燥度指数が増加する(湿潤になる)につれて、植生が増加することを示していますが、植生の増加は、乾燥度指数が約0.3のときにピークに達しました。この0.3という値 は、疎林(灌木地、サバンナ)や草原が分布する乾燥度指数の平均値に近い値です。乾燥地の大部分を占める草原や疎林では、0.3という値が安定した生存の閾値であることが示唆されました。
 乾燥地における典型林と乾燥度指数の空間分布を重ね合わせることで、乾燥地における典型林のポテンシャル分布を統計的に抽出することを試みました(図3)。乾燥度指数が0.45以上の地域がそのポテンシャルを持ち、面積は13,745,997 km2と推定されました。しかし、その地域のほとんどが農牧業に利用されている地域であり、土地の劣化が危惧されています。
 乾燥地の50%以上を占める乾燥地林と草原は、現状乾燥度指数が0.3以上の地域に存在しています。もしこれらの土地が適切に管理されれば、1年に0.84ギガトンのSOC(土壌有機態炭素)を隔離できると予想されます。2012 年から 2021 年にかけて、大気中の炭素は年間 5.2 ギガトンの割合で増加し続けていることを考慮すると、乾燥地林と草原はその16.2%を隔離できることになります。乾燥地での森林再生が必要であることは明らかですが、本研究における結果は、草原や乾燥地林の適切な管理も重要であることを示唆しています。

用語解説
「乾燥度指数」:年間の降水量を年間の可能蒸発散量で割った比の値です。ここで、可能蒸発散量というのは、水が十分に供給されたときの蒸発散量であり、実際の蒸発散量とは異なり、その上限値を与える仮想的な地表面からの蒸発散量です。値が小さくなるほど水収支的に乾燥していることを示します。


図1.2000年~2020年までの平均乾燥度指数の空間分布


図2.乾燥度指数(AI)と年最大植生指数との関係


図3.2020年の乾燥地における典型林(a)と典型林ポテンシャル(b)分布