Tottori University

ホーム > ニュースリリース > 衛星データによる乾燥度指数は、将来、干ばつのリスクが高いトルコの主要な農・牧蓄業に対して、有益な監視プロダクトであることが示されました。

衛星データによる乾燥度指数は、将来、干ばつのリスクが高いトルコの主要な農・牧蓄業に対して、有益な監視プロダクトであることが示されました。

Monitoring of recent aridification in Türkiye using MODIS satellite data from 2000 to 2021
Reiji Kimura, Masao Moriyama, and Levent Saylan
MODIS衛星データを用いた2000-2021年までの乾燥度モニタリング
Journal: SOLA (Scientific Online Letters on the Atmosphere)

近年、地中海沿岸諸国では熱波や干ばつ、森林火災等の異常気象が頻発しています。気候変動影響のシミュレーションでは、2100年頃における気温は1990年頃と比較して2℃以上増加、降水量は最大20%減少すると見積もられており、乾燥地の増加が危惧されています。地中海沿岸に位置するトルコも例外ではなく、熱波や干ばつ、森林火災等の気候変動の影響と思われる事象が頻発しています。本研究では、2000年以降のトルコにおける乾燥度や干ばつに関して、衛星データを用いてモニタリングすることを試みました。年平均気温は統計的に有意性のある増加傾向を示しましたが、年降水量に関しては年々変動が大きく、変化の有意性は見られませんでした。それにも関わらず、本研究で示した衛星解析結果は植生の大幅な増加傾向(乾燥化の減少傾向)が、トルコ北部、西部、南部地域で見られました。理由として、政府主導による植林および果樹園、灌漑農地の割合の増加が考えられます。トルコ全体では乾燥化の減少傾向が見られるものの、中部アナトリア地域および東部乾燥地域では干ばつが頻発しています。衛星による乾燥度指数(Satellite-based Aridity Index) の値がある閾値を超えた場合、それらの地域は干ばつに脆弱であることが分かりました。衛星データによる乾燥度指数は、将来、干ばつのリスクが高い中部アナトリア地域および東部乾燥地域の主要な農・牧蓄業に対して、有益な監視プロダクトであることが示されました。

図1.非干ばつ年(2018年)と干ばつ年(2020年)のSatellite-based Aridity Index(SbAI)の分布。干ばつの年は、赤色の部分(SbAI≥0.025)の面積が増加する。


図2.図1の赤色部分の面積の年々変動。赤丸は干ばつ年を示す。面積が28万km2を超えると干ばつの傾向が顕著であることが理解できる。