調査報告

黄砂プロジェクトの一環として、2012年2月4日から2月14日まで、乾燥地研究センターの山中典和、篠田雅人、医学部の大谷眞二の3名で、アフリカ・マリ共和国を訪れました。マリ共和国は西アフリカで、サハラ砂漠の南に位置します。日本からは、成田からパリ経由でマリ共和国の首都バマコに入りました。現地では乾燥地研究センターで大学院修士課程を終え、マリ共和国で海外青年協力隊員として働いている源実恵氏に案内をしていただき、砂漠化の状況や砂漠化対策の最前線を広範囲に視察することができました。特に村人が積極的に植林を始めとする砂漠化対策に取り組んでいる姿、そして、過酷な現場で働いている青年海外協力隊の皆さんの姿に心を打たれました。これらの視察の成果は一部、黄砂プロジェクト写真展の中でも紹介しました。 
帰国後、マリ共和国は「アラブの春」の余波を受けて、治安が悪化しています。現地で働いている青年海外協力隊の方々を始めとする日本人も国外避難状態です。マリ共和国の治安が一日でも早く回復することを祈っています。

 
 サハラ砂漠からやってくる砂嵐
(写真:源実恵)
砂漠化対策の一つとして用いられているストーンライン。水土の流亡防止、水の効率的利用等々のために設置されています。
(写真:山中典和) 
砂漠化対策を積極的に行っている村の皆さんに対策の現場を案内してもらいました。
(写真:山中典和) 
 
改良かまどの普及。青年海外協力隊の仕事として、改良かまどの普及に力を入れていました。かまどを改良し、燃焼効率を上げることにより、消費される木材資源を節約することができます。左が改良かまどで、右が従来のかまど。
(写真:山中典和) 
 

発生源対策グループ。

2011年8月に中国内蒙古自治区のクブチ砂漠で調査を行いました。発生源対策グループでは乾燥地における持続可能な植林技術、生態系回復技術に関する様々な研究を行っていますが、今回は、一般社団法人・地球緑化クラブの協力を得て、砂丘固定のために植えられている樹木の生理・生態調査を行いました。現地では、ヤナギやポプラの仲間が多く植栽されますが、特にポプラの仲間である小葉楊(Populus simonii)に着目した調査を行いました。砂丘地では砂に埋もれたり、また逆に根元の砂が持ち去られて根が露出することがしばしばおこります。今回調査した小葉楊は、砂に埋もれることに対する強い抵抗性を示し、むしろ砂に埋もれることにより成長が促進されることがわかってきました。

   
 遥かかなたまで続く砂丘列。内蒙古自治区クブチ砂漠にて。
(写真:山中典和)
 砂丘に植えられた小葉楊の成長や生理を測定しています。
(写真:山中典和)