研究計画
【研究題目1】統合型小流域管理による土壌侵食の削減
青ナイル川上流域において高地、中間地、低地のそれぞれ1カ所で研究対象とする小流域を設定する。それぞれ土地保全対策を施す小流域と施さない小流域をペアで設置・比較する対照流域法を用いる。各小流域において、以下の三つの活動により、安価で正確な土壌侵食観測システムの開発、侵食リスク評価のための空間モデルの開発とそれを用いた土壌侵食の将来予測、新たな土壌侵食防止技術の開発を行い、それらを統合的に適用することにより、これらの小流域において土壌侵食の削減をめざす。
1-1 安価で正確な土壌侵食観測システムの開発
1-2 侵食リスク評価のための空間的土壌侵食モデルの開発
1-3 土壌侵食防止手法の開発
【研究題目2】新たな耕畜連携システムによる土地生産力の向上
家畜を放牧地で飼育する伝統的な自由放牧は、過放牧による土地の劣化や土壌侵食の要因となっている。そこで家畜を畜舎で飼育する舎飼いを基本とする新しい耕作-畜産連携システムを実現するための技術を開発し、土壌侵食の抑制と土地生産力の向上を図る。小流域レベルの土地生産力の向上をめざす。
2-1 耕地における統合的土壌肥沃度管理・保全農法の開発
2-2 牧草地における牧草改良をともなう舎飼いシステムの開発
2-3 劣化した斜面地における土地修復手法の開発
【研究題目3】経済的・社会的エンパワメントによる農家生計の向上
エチオピア農村では女性および若者が社会的に脆弱であり、経済的にも貧困である。そこで女性と若者の能力を開発し、新たな収入源の導入と市場へのアクセスおよびバリューチェーン(価値連鎖)の構築により経済的・社会的エンパワメントを図る。
3-1 貧困と社会的格差の要因の解明
3-2 付加的収入および雇用機会創出のための市場指向型バリューチェーンの構築
3-3 女性および若者に対するSLMへの参加を通じた経済的・社会的エンパワメント手法の開発
【研究題目4】統合型小流域管理技術・アプローチの総合化
本研究題目は、研究題目1~3を調整・統括し、1~3で得られた成果を総合化することにより、次世代型SLMフレームワーク(エチオピアモデル)を開発・提案する。また三つの小流域ごとに、小流域の課題を農民・行政機関もまじえて考える「小流域ステークホルダー協議会」、および次世代型SLMの課題や普及手法を関連省庁、ドナー等と協議する「SLMイノベーションプラットフォーム」を設置する。
4-1 複数の小流域将来シナリオの開発
4-2 流域への普及のためのSLMアプローチの開発
4-3 次世代型SLM技術とアプローチのためのフレームワークの開発