『砂漠化』とは、もともとは緑だった土地が、植物が育ちにくい土地になってしまうことなんだ
「砂漠化」とは「乾燥、半乾燥および乾燥半湿潤地域における色々な原因(気候変動や人間の活動を含む)による土地の劣化(植物が生育できにくくなること)」を言います。
つまり、「砂漠化」とは、主に乾燥した地域で、人が住んでいるところや植物の生えているところが気候変動や人間活動により不毛の大地になってしまうことです。もともと人も住めず植物も生えない砂漠では砂漠化は起こらないのです。
大きく分けて2つの理由で、砂漠化は起こってるんだよ
気候的要因と人為的要因に分けられますが、人為的要因が大きな割合を占めています。
気候的要因
サハラ
砂漠の南では、1930年よりあとは干ばつ(※長い間雨が降らないこと)が数年おきに現れるとともに、1985年にかけてしだいに雨の量が少なくなってきています。特に1968~73年の干ばつは厳しく、大地がひからびてしまいました。これが
砂漠化防止の国際的取り組みのきっかけとなったのです。これらの気候変動には、大気中の二酸化炭素が増えたことによる地球の温暖化や熱帯の森林の減少、海の温度の変動等と何らかの関係があるのではないかと言われていますが、まだよくわかっていません。世界中の研究者ががんばって研究をしています。
「昔、サハラ
砂漠は緑におおわれていた」と言われています。これも気候変動の影響で、今までに何度も緑の時期と
乾燥する時期をくり返してきました。サハラ
砂漠の奥地のタッシリ・ナジェールという場所では、古代人が描いた野生動物などの岸壁画を見ることができます。このタッシリ・ナジェールとは現地の言葉で「水流の多い場所」を意味します。しかし現在、この近くにあるオアシスでも年降水量は20ミリ程度です。
干ばつで畑が干上がってしまう(アフリカ・スーダン)。(撮影:山中典和)
人為的要因(※人間が原因)
砂漠化の
人為的要因としては、ヤギやヒツジの飼いすぎ、木の切りすぎ、開墾耕作のやりすぎ、などがあげられます。これらによって植物が少なくなり、風で土が飛ばされたり(風食)、水雨で土が流されたり(水食)するようになります。さらにまちがった水管理によって土の表面へ塩がたまり、農業ができなくなります。
また
砂漠化の根本的な原因には、そこに住んでいる人々の貧困と急な人口増加といった社会・経済的な問題があります。
ヒツジやヤギの飼いすぎで、草がなくなってしまった(中国・内蒙古自治区)
(撮影:山中典和)
植えた木を食べるヤギ(中国・内蒙古自治区)
(撮影:山中典和)
木を切りすぎると、土地が荒れてしまいます(ブラジル)
(撮影:山中典和)
世界には、樹木をエネルギーとして利用している人がたくさんいます。
木を切って、すべて畑にしてしまった山(中国・黄土高原)
(撮影:山中典和)
畑の作りすぎで侵食が進んでいます。
「気象と地球の環境科学」 二宮洸三著 オーム社出版より
世界の乾燥地の10~20%で土地が劣化しています。2015年のUNCCD(国連砂漠化対処条約事務局)の報告によれば毎年264万ヘクタール(岩手県と秋田県をあわせたぐらいの面積)が砂漠化していると言われています。砂漠化の調査は国際連合が中心となり、各国が協力して行っています。
砂漠化対処条約ってなに?
世界中の国で、協力して砂漠化を止めようという、取り決めだよ
世界各国はこの砂漠化の危機に対応するため、砂漠化対処条約という取り決めを結んでいます。
これは、深刻な干ばつまたは砂漠化に直面する国々(特にアフリカの国)において砂漠化に対応するための国際連合条約をいいます。
この条約の目的は、特にアフリカなどの砂漠化および干ばつの影響を受けている地域の砂漠化を防止し、かつ干ばつ被害を少しでも小さくすることです。このため国際社会が解決に向けて協力することを基本原則としています。
この条約の中では、まず解決するべき問題として、貧困をなくす、食料を確保する、人口の変化を予測する、自然資源が持続可能な(いつまでも利用できるような)管理をする、持続可能な農業をする、教育を充実させる などがあげられています。
韓国で行われた砂漠化対処条約の会議(2013年)
(撮影:山中典和)
砂漠化対処条約の会場で活動報告をする乾燥地研究センター(2013年)
(撮影:山中典和)
国連は2006年を「砂漠と砂漠化に関する国際年」と定めました。これは、深刻な干ばつや砂漠化の被害に苦しむ人々に対して、国際社会の認識を高めることを目的として設定されました。
2015年ニューヨーク国連本部で、「国連持続可能な開発サミット」が開催され、150を超える加盟国首脳が参加し、その成果文書として「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2013アジェンダ」が採択されました。アジェンダには、人間、地球および繁栄のための行動計画として、宣言および目標をかかげました。この目標が、ミレニアム開発目標(MDGs)の後継であり、17の目標と169のターゲットからなる「持続可能な開発目標(SDGs)」です。砂漠化対処条約事務局では、この持続可能な開発目標に「ゼロネット土地劣化(Zero Net Land Degradation)」を、2030年までに実現することを盛り込むように提案しています。ゼロネット土地劣化とは、さらなる土地劣化の回避と劣化した土地の回復(land restoration)によって、差し引き(=土地回復面積-土地劣化面積)がプラスとなるようにすること、すなわち土地劣化の中立性を達成することです。