ナイルデルタの亀裂性土壌における迂回流が塩分の溶脱に及ぼす影響


Effect of Bypass-Flow on Leaching of Salts in a Cracking Soil in the Nile Delta
(ナイルデルタの土壌亀裂による迂回流が塩分の溶脱に及ぼす影響)



藤巻教授とHassan Mohamed研究員の論文がWaterに掲載されました。

持続的な灌漑農業には適切な塩分管理が欠かせません、灌漑農業が展開される多くの農地では粘土含量が高く、灌漑から数週間経過すると大きな亀裂が形成されます。そこで、ナイルデルタの粘土質土壌を例に亀裂が塩分の溶脱に及ぼす影響を調べました。 小麦の生育終盤における根群域下部の土壌水の塩分濃度(EC)は4〜6dS/m程度でした。水稲栽培の前後の根群域下部の土壌水のECはいずれも4dS/m程度で、湛水条件下にあったにもかかわらず,土壌塩分貯留量はほとんど減少していませんでした。 また、飽和透水係数は1.4cm/d程度とかなり小さいため、均質土壌を仮定すると理論的には大きな地下水面勾配が予想されるものの、実際には地下水位は暗渠からの距離に拘わらずほとんど同期していました。 さらに、地下水のECは1.7dS/m程度で、土壌水のそれの半分以下でした。暗渠出口のECは灌漑中に0.7程度まで減少していました。以上の結果は、土壌水分移動のかなりの割合が粗間隙とりわけ亀裂を通じて行われていることを示しています。 仮に粗間隙経由の浸透水は微細間隙中の溶質を受け取らず、灌漑水の塩濃度のまま地下水に到達したと仮定すると、半分強の灌漑水が粗間隙経由で流れているものと推定されます。 粗間隙経由の流れを防ぐためには点滴灌漑やスプリンクラー灌漑の導入が推奨されます。