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砂漠化さばくかを防ぐ技術を教えて!

砂漠化さばくかを防ぐために、色々な分野でたくさんの方法が研究されているんだよ

大きく分けて


があります。

1.砂漠化さばくかを防止し、自然を回復させる技術

砂漠化さばくか監視かんしする技術(リモートセンシング技術の利用)

砂漠化さばくかを防止するには、どの地域でどの程度砂漠化さばくかが進んでいるのかという調査がまず必要です。現在では航空写真の他、ランドサット、ノア、スポット等の人工衛星から送られてくる写真を調べることが、砂漠化さばくかの状態を監視かんしするための大きな武器となっています。

砂の動きを止める技術

例1:中国の砂丘固定(林を作り、砂の動きを止める方法)

中国内モンゴル自治区のムウス砂漠さばくでは砂漠化さばくかに伴い固定されていた砂丘が動き出しました。ここでは動き出した砂を止めるため、植林が行われています。ムウス砂漠さばく半乾燥地はんかんそうち ですが、地下水が豊富で樹木が育ちやすい地域です。植林は動いている砂丘の風上側で、水分条件がよい場所にヤナギの枝を直接土に挿して増やす方法で行われます。ヤナギが根付くとその部分の砂の動きが小さくなります。そしてやがて砂丘全体の高さも低くなってきます。これを何回もくり返すことにより砂の動きが止まってきます。

砂丘固定のために植えられたヤナギの木(中国、内蒙古、毛烏素砂地)
(撮影:山中典和)

例2:中国内モンゴル自治区の草方格そうほうかく

中国の砂漠さばくでは道路、鉄道などの特に重要な場所を移動する砂から守るために、草方格そうほうかくと呼ばれる、よりきめ細やかな緑化が行われています。草方格そうほうかくとは麦わらや木の枝を砂中に押し込み、低いさくを1m×1mのあみ目状に作っていき、砂の動きを抑える方法です。

枯草を敷き詰めて砂の動きを止める草方格(中国・タクラマカン砂漠)
(撮影:山中典和)

砂漠化さばくかした土地に植物を植える技術

植える木の種類を選ぶ

乾燥地かんそうちの植林ではどのような種類の木を植えるかが最も重要な問題となります。きびしい自然の中で広い面積に植えられた苗木を長期間かけて育てていくには、できるだけお金や手間のかからない方法を考える必要があります。そのためにはまず、現地の厳しい自然条件にあった、乾燥かんそうに強い、時には塩に強い木の種類を選ばなくてはいけません。さらに住民の生活を守るためにも、葉が家畜のエサとして利用できる、あるいは果実が食べられる等いろいろな利用が出来る樹種が求められます。またその土地本来の自然を取り戻すには、その土地にもともと自然に生えている植物を利用することが大切です。

中国内蒙古自治区でよく植えられるヤナギの木。葉は刈り取られ、家畜のエサになる。(中国内蒙古・毛烏素砂地)

(撮影:山中典和)

乾燥地かんそうちで木を植える技術(雨水の有効利用)

地下水を利用できない地域で、植林を成功させるためのポイントは、限られた雨水をいかに有効利用できるかにかかっています。
このため、植え付けられた苗木を囲むように半円形またはV字状に盛り土をし、その中を流れる雨水を逃さず地中にしみこませたりします。また一度土にしみこんだ雨水が土の表面から失われるのを防ぐため、苗木の周りに小石を敷きつめたり、砂をまいたりします。さらに苗木周辺の雑草によって水がとらえるのを防ぐため、きちんと草をとります。

魚鱗坑ぎょりんこうと呼ばれる、植林のための植穴。斜面を流れる水を植えた苗木の周りに集めるための工夫。(中国・黄土高原)

(撮影:山中典和)

木を植えた穴は、遠くから見ると魚のうろこのように見える(中国・黄土高原)
(撮影:山中典和)

空から植物の種をまく

飛行機を使って空から種をまくやり方で、大面積の緑化に効果がある方法です。中国では内モンゴル自治区などの半乾燥地はんかんそうちの緑化で多く用いられています。使われる植物はその土地に自生する植物が中心で、ヨモギやマメの仲間の低木や草、マツ類などがよく使われます。種子や肥料などを粘土で包んだ土ダンゴを作り、空からまく場合もあります。

飛行機で種子を播き、緑化に成功した場所。緑化の前は一面の砂地だった。(中国・陝西省)

(撮影:山中典和)

2.食料生産と持続的農業じぞくてきのうぎょう技術

灌漑かんがいの技術

乾燥地かんそうちにおいて、作物を育てるためには灌漑かんがい(=作物に水を与えること)が必要不可欠です。
乾燥地かんそうちでは作物を作るために利用できる水はわずかしかありません。少ない水をいかに効率よく利用するかが大切です。このために、チューブから作物の根元にぽたぽたと点滴のように水を与える「点滴灌漑かんがい」という技術が開発されています。

エジプト・ハッターラ地区(撮影:北村義信)

点滴灌漑かんがいで、砂漠さばくに木を植える(中国・内蒙古自治区)
(撮影:山中典和)

塩がたまった土を改良する方法

農地にたまった塩分を取り除き、再び農業ができる状態にもどす方法として、次のようなものがあります。
  • 地面にたまった塩分を削って取り除く
  • 塩分をよく吸収する作物を植える
  • リーチング:土に多量の水をかけて土の中にたまった塩分を洗い落とす

流水客土きゃくどによる土壌改良の様子(撮影:北村義信)

流水客土きゃくどとは、塩類集積をした農地を堤防で囲み、流出土砂を含む濁水を引き入れることで土壌を改良する方法です。

排水の技術

農地から塩分をたくさん含んだ余分な水を取り除き、地下水位を下げるための正しい排水技術が必要です。たとえば、穴をたくさんあけたパイプを水平に埋めたり(暗きょ排水)、排水路を整備したりして、水の出口をつくります。

塩害を防止するための暗渠あんきょ排水システムの敷設(Nile Delta, Egypt)
(撮影:北村義信)

暗渠あんきょ排水システムのマンホール(Nile Delta. Egypt)
(撮影:北村義信)

乾燥かんそうや塩に強い作物を作る

乾燥地かんそうちで作られる作物は乾燥かんそうに強くなければいけません。また、塩に強い性質も必要になります。このため乾燥かんそうに強く、塩にも強い作物を選びだしたり、作り出したりする研究が行われています。
ふつう行われるやり方として、まずたくさんの種類の作物を集め、それらを乾燥かんそうした場所や塩のある場所で育て、強いものを次々と選んでいく方法をとります。 最近では遺伝子操作いでんしそうさによって別の種類の植物や他の生物から乾燥かんそうや塩に強い遺伝子を作物の中に入れ込む方法も研究されています。実際に別種の遺伝子を入れて乾燥かんそうや塩に強い植物を作ったという成功例もいくつか報告されています。将来有望な技術ではありますが、その安全性についても研究が必要です。

(撮影:辻本壽)

また最近は、砂漠化さばくか、土地劣化に対処する上で、持続可能な土地管理という考え方が中心的な役割を担っています。持続的な土地管理(Sustainable Land Management : SLM)とは、適切な土や水の管理によって持続的な土地生産、生計の維持、環境の保全と実現する、技術や仕組みを含めた考え方です。




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