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砂漠化さばくかの主なタイプは3つあるよ


風 食

砂漠化さばくかの直接の原因の一つに風があります。風は土を動かす働きを持っています。この働きにより、肥沃ひよくな土(表土)が奪い去られてしまうと、植物の根があらわれて枯れてしまいます。また表土が失われた場所は、植物に必要な水や養分を十分に与えることができないので、植物の育ちは良くありません。さらに、風が吹くたびに、残っている肥沃ひよくでない土砂も奪われ続けるので、植物は育つことができません。このように風が土砂を運び去ることで砂漠化さばくかがおこるわけです。

風で根元の砂が吹き飛ばされたポプラ(中国、内蒙古自治区)
(撮影:山中典和)

ところで、風によって運び去られた土砂はどこに行ってしまうのでしょう?消えてしまうはずはないのでどこかにあるはずです。広い範囲に散らばっているとちょっとホコリっぽいですが、まあ、あまり大きな問題にはなりません。しかし、狭い範囲にたまってしまうとたまった範囲の土地をたまる前と同じようには使えなくなってしまいます。家や農地が土砂に埋もれてしまうと大変ですね。たまる土砂の大半は表土ではないのでたまった場所に植物を植えても育ちが良くありません。さらに風が吹くたびに土砂が運び込まれ植物は埋もれてしまい育つことができません。
このように風が土砂を運び込むことでも砂漠化さばくかがおこるわけです。 このように風は、土を運び去ることと運び込むことの二つの方法で、砂漠化さばくかを進めます。

砂に埋もれる家(スーダン)(撮影:山中典和)

砂に埋もれる道路(中国・内蒙古)(撮影:山中典和)

春先に日本にやってくる黄砂は、ユーラシア大陸の中央部における砂漠化さばくかの影響を受けて、どんどん激しくなってきています。日本、中国、韓国、モンゴルが黄砂対策を一緒になって考えています。

鳥取にやってきた黄砂。白いのは月ではなく太陽です。(撮影:山中典和)

水 食

3つの砂漠化さばくかのうち、最も大きな割合を占めるのが「水食」です。水食とは、雨粒と表面を流れる水の流れの勢いによって、土が斜面の下の方へと少しずつ流され、土の厚さがどんどん薄くなっていってしまうことです。
土には「保水力」と言って、しみこんできた水をため込む能力があります。この土の保水力のおかげで、雨灌漑あめかんがいのあと何日も何十日も植物の根が水を吸い続けることができるわけです。土の厚さが薄くなると、薄くなった分だけ水をため込む能力が減るため、余った雨水が表面を流れやすくなります。そうするとますます土が流されて薄くなり、ひどい場合には岩肌がむき出しになってしまいます。岩肌や石ころには保水力がほとんどありません。ですから、土が流されて岩肌がむき出しになった大地には、たとえ雨が時々降ったとしても、もはや植物が生い茂ることはできません。これが水食による砂漠化さばくかです。

畑の土が雨に流されてしまった。(アフリカ・マリ共和国)
(撮影:山中典和)

道路の土も雨に流される(中国・黄土高原)
(撮影:山中典和)

砂漠さばくといえば雨の少ないところなので、雨によって砂漠化さばくか が起こるというのは意外に思えるかもしれません。でも地面を覆う植物も少ないので、少しの雨でも土砂が流れ出てしまいます。

塩 害

砂漠地帯さばくちたいの国々では、地面に塩がたまる塩類集積えんるいしゅうせきという問題を抱えています。塩類集積えんるいしゅうせきが起きると、土の中の塩が植物に害を与えるため、その土地はやがて植物の育たない土の塩だけの砂漠さばくとなっていきます。

塩類集積で被害を受けたワタ畑(中国・新疆ウイグル自治区)
(撮影:Maimaiti, Ailijiang)

1.塩類集積えんるいしゅうせきとは?

砂漠さばくなどの乾燥地かんそうちでは降水量こうすいりょうが非常に少なく、土も空気も非常に乾燥かんそうしています。このような場所では、雨だけで畑に十分な水をあげることはとてむずかしいことです。そこで乾燥地かんそうちでは、用水路などを作って近くの川や湖から水を引いたり、地下水をくみ上げたりして畑に水をまいています。畑にまかれた水は、一部は植物がすい、一部は土の下の方へと流れ、一部蒸発じょうはつといって水が水蒸気すいじょうきに変わって空気中に水が逃げていきます。土の中に残る水はわずかで、その土の中にある水は地面の上の方が乾いてくると下の方から上の方へと少しずつ移動して、表面のあたりで蒸発じょうはつしてしまいます。

塩類集積えんるいしゅうせきの起こり方 ]

砂漠さばくなどの乾燥地かんそうちでは、太陽が強く照りつけるため、たくさんの水が下から上へと移動し、蒸発じょうはつしてしまいます。川や湖、地下水には、いろんな種類の塩がとけているのですが、土の中で水が移動するときにこの塩も水の中に溶けたままで一緒に移動します。しかし土の表面あたりで水が蒸発じょうはつするとその中に溶けていた塩は固まりとなって残ってしまいます。「塩が溶けている水をまく→その水が蒸発じょうはつして塩が残る」を何度もくり返すうちに、地面にはたくさんの塩がたまり、大きな塩類集積えんるいしゅうせきをおこしてしまうのです。
日本などでこのようなことがほとんど見られないのは、土の中の塩がたくさんの雨で洗い流されてしまうからなのです。

2.植物と塩

植物の体内の水は、何も混じっていない水に比べると濃くなっています。植物の根の周りにある水が植物の体内の水よりも薄ければ植物は水を吸うことができますが、周りの水の方が濃ければ植物は水を吸うことができず、反対に体内の水を失ってしまいます。植物体内の水にも塩が溶けています。
もし根の周りの水に体内よりもたくさんの塩が溶けていたら植物はどうなるのでしょうか?
そうです。植物はその水を吸うことができず、やがてしおれて、しまいには枯れてしまうのです。また体内に水と一緒に取り込まれた塩のうち、ある種類のものは植物の体の働きを狂わせてしまいます。ですから、乾燥地かんそうちでは地面に塩がたまりやすいため植物が育ちにくく、たくさんの塩類集積えんるいしゅうせきが起こると植物が生きられなくなり、やがてただの塩と土だけの大地となってしまうのです。
  

普通の水で育てたダイズ

 

塩水で育てたダイズ

(撮影:安萍)

   

塩の濃度によるコムギの生育の違い(左:塩の濃度が濃い→右:水)
(撮影:Yasir Seraq Alnor MOHAMMED)

塩処理した中国のヤナギ、カンリュウ(Salix. matsudana)(上)とサリュウ(Salix psammophila)(下)。サリュウが塩に強いことがわかります。(提供:山本福寿)

3.塩類集積えんるいしゅうせきへの対策

この問題を解決するためには、一度にたくさんの水をまかずに少しずつ植物が必要なだけの水をあげるなど、畑の水やりの仕方を工夫したり、土から塩を取り除いたり、塩に強い植物を植えたりしなければなりません。

塩類集積地でも生きられる樹木(中国・新疆ウイグル自治区)
(撮影:山中典和)



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