核および染色体の任意ゲノム領域を可視化する新しい技術開発に関する石井講師らの論文が、New Phytologistに掲載されました。


Ishii et al. (2019) RNA-guided endonuclease - in situ labelling (RGEN-ISL) - a fast CRISPR/Cas9 based method to label genomic sequences in various species (in press), New Phytologist




 ゲノム編集技術としては、2012年に発見されたCRISPR / Cas9システムが科学界では認知されている。これはCas9タンパク質のハサミ状の特性を利用して、任意のDNAを切断することで様々な研究に利用するものであった。今回開発技術は、このシステムを応用して、任意のゲノム領域をタイマツのように光照らせる染色体生物学的な新技術であり、RNA-guided endonuclease - in situ labelling(RGEN-ISL)法と名づけた。
 また、DNA配列を染色体(ゲノム)レベルで可視化する一般的な方法としては、過去30年間、蛍光in situハイブリダイゼーション法(FISH法)が幅広く使用されてきた。しかし、この方法はゲノムDNAの変性(二本鎖のDNAを一本鎖に乖離する事交差状となっている染色体をばらすこと。)が必要なことから、試料の構造に損傷を与えることが問題であった。また、蛍光させた特定のDNAを注入しても、試料内に存在する同種のDNAを特定するまでに相当の時間(約1日)が必要であった。石井講師の研究は、これらの問題を解決するため、CRISPR / Cas9システムを応用することで、従来のFISH法の蛍光標識特性をもつが、DNA変性を不要とする新技術を開発することに成功したもので、RGEN-ISL法によって、特定ゲノムの時空間における構造(三次元的な追跡)を観察できるようになった。



 
 左図:
新技術によりササゲの細胞の核で可視化されたテロメア配列(赤い点)
 右図:
RGEN-ISL法で使用したテロメア配列を可視化するRAN-タンパク質複合体の模式図(RGEN)